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(ネタバレ)阿部ユカ黒幕説 映画『ヒメアノ~ル』観ました

 

ヒメアノ~ル映画版、作品の軸というか目標地点として作ったシーンが

「タイトルが入る部分」と「和草夫妻殺害シーン」

だったという情報を聞いて、もやっと考えてたことがマジだったんじゃないかと思ったんで書こうと思います。

 

まず、画面にタイトルが入るシーン。

普通どあたまに来るはずのタイトルが、かなり中盤に来てるんですよね。

この作品、ラブコメパートとバイオレンスパートのギャップが特徴なんだけど、

私この演出は

「ラブコメパートは映画ではない」

という宣言だと受け止めました。

 

漫画原作の恋愛映画にアイドルが起用されて恋の奇跡が…

みたいなのって、最近流行ってるじゃないですか。

この映画も前半はかなり笑えるラブコメ。

なんだけど、そんなものは日常であって物語ではない。

物語るに値しない。

物語らなければ消化できないヒトの狂気を、ヒトの本性を見よ。

こっからが本番だぜ?っていう宣言かと。

ジャニーズ森田剛っていうアイドルが出演してるのもあって、

まあ一種のあてこすりかな、と。

 

で、和草夫妻殺害シーン。

和草嫁を撲殺する画と音とが、ユカがセックスする画と音とにダブらされて、

こと切れるシーンが射精のシーンに重ねられる。

ここを目指してつくったとなると、

もやっと考えていた「捕食者・ユカ」という裏テーマがマジであるんじゃないかと思えてきたんですね。

 

タイトルのヒメアノ~ルという言葉は造語で、小さい爬虫類の種名をイメージしているらしいのです。

食う、生殖する、という本能しかもたない爬虫類の世界の、被食者であるヒメアノ~ル。

現代社会における弱肉強食が作品のテーマ。

主人公は、いじめられっ子というかつての被食者が、

いじめっこを殺したことで捕食者として目覚めた存在・殺人鬼森田。

対するは、か弱く善良な被食者岡田。

森田がストーキングしていたユカを自分がゲットしたことで、

「岡田を殺す」と森田が決断するところからストーリーは始まります。

 

実は、岡田にはユカの一件以外にも、森田に恨まれる原因がありました。

高校時代にイジメに加担したという思い出。

自分が殺人鬼森田を生んだ、自分のせいで周囲の人間が巻き込まれている、

という自責の念に苦しみながら、ユカと二人で森田の陰におびえる生活を続けます。

 

そして物語のクライマックス、岡田は森田に高校時代のことを謝ります。

しかし、フタを開けてみれば森田はそのことを覚えていなかった。

ここで、観客は森田の犯行動機について宙ぶらりんの状態にさせられます。

じゃあなぜ岡田は殺されかけているんだ?

 

…ユカだ。

 

高校時代の件がないとすれば、岡田が森田に狙われる理由はただ一つ。

ユカを奪ったから。

そしてそれも、岡田から積極的にユカにアプローチし、恋人関係になったわけではないのです。

ユカの方から岡田に声をかけ、ストーキングのことを相談する。

ユカの方から岡田に好意をしめす。

そして、ユカの方から誘惑し、例のセックスシーンにつながる。

 

この時点で岡田はユカに「捕食」されており、事件には完全に巻き込まれた形になってます。

死とセックス、タナトスとエロスの対比で「もう一人の捕食者」などというのは

あまりにも月並みなんですが、もう少しお付き合いください。

 

結論から言えば、

私はユカが意図的に岡田を巻き込んだという読み方ができるのではないかと疑ってます。

彼女はストーカー被害に遭ってる中で、犯人と岡田が知りあいだと知ります。

そして声をかけてみたところ、

岡田から「彼氏がいれば、被害が減るかも」と言われるのです。

そしてその当人(と安藤さん)が、なぜか自分を守ろうと必死。

 

コントロールもしやすそうだし、じゃあ彼氏にしてボディガードにしちゃおう、

という発想に至るのは、自然なことのようにも思えるんですよね。

ユカの初体験は14歳、経験人数は2ケタ。

善良な童貞を捕食するなど訳ない経験値の持ち主だし。

 

とはいえ、往々にして10代の少女が異性との関係で優位に立てることなどはごくまれで、

彼女の十数人との性体験もその多くが「捕食された」と読むのが妥当。

岡田に対しては簡単に断れるピンクローターも、

かつては断れない相手がいた(もしくは彼女が情報弱者であった)のです。

 

つまり、森田がバイオレンス部門で捕食されていた10代、

彼女はセックス部門で捕食されていた。

そして両者とも、捕食する側に成長して岡田に迫る。

岡田とユカの恋愛は多くの漫画原作恋愛映画と同様、コメディタッチに描かれているものの、

そこにあったのは、後半部分と何ら変わりない、かつての被食者が捕食者となって弱者に迫る姿だったのです。

 

作品のちょっとの外の話にはなってしまうのですが、

映画化に当たっての大きな変更点として、安藤さんの恋愛エピソードの大幅削減があります。

原作では、安藤さんはソープ嬢に恋してそのヒモにとっちめられ、

恋愛弱者っぽいアラフォーをたらしこもうとして逆に惚れてしまう、徹底的な弱者として描かれてます。

 

特に、安藤→ソープ嬢→ヒモという流れは、テーマである弱肉強食を如実に示すエピソードでもあります。

安藤さんをつかってセックス部門の弱肉強食が描いていたのを、映画では削除しているので、

このあたりはユカに捕食者としてのキャラクターを与える十分な理由になるんではないでしょうか。

 

さらに原作の話をしちゃうと、原作の森田は生まれながらのサイコパス殺人鬼。

一方映画では、元々は優しい青年として描かれています。

つまりキャラクターとしては、行動に理由づけが必要なのは映画の方の森田のはず。

にもかかわらず、原作でちょっと触れられている「ユカを狙う理由」が、映画では語られません。

 

つまりここには、森田のストーキングの原因がまったく理不尽で一方的なものではない可能性が残されるのです。

というか、原作では明示されていた「理不尽で一方的なものだ」という説明が削除されているとも言えます。

ここに意図があるとすれば、ユカと森田の間に接点があった可能性を、敢えて残したのでは?と疑いたくなります。

 

森田が「阿部って女」と名前を知っていたのは、ストーキングの成果だと考えるのが自然なんですが、

ユカが「信用できない語り手(語り手じゃないけど)」なら、そうではないのかもしれない。

一連の事件は、本当は全てユカに起因していた可能性も残るのです。

本人が「あたしのせいで、安藤さんが…」と言ったように。

 

もし仮に、ユカが森田をかつて「捕食」していたのだとするならば、

いじめも貧困も解決した(和草を金づるにする、金持ちの家を襲って衣食住を確保する)森田の殺人パワーは、

恋愛だけは解決できなかったという事になります。

恋愛強者であるユカは、その恋愛パワーを用いて岡田をボディガードに仕立て、見事に森田を退けたのです。

 

岡田は森田のことを「人間じゃないみたい」形容する一方で、

ユカのことも「かわいいし若いし、安藤さんとは生き物として違いすぎます」という(うろ覚え)言い方をしていました。

つまり岡田からは二人とも自分とは違う生き物に見えている。

一方で、当の森田は「俺たち底辺」と岡田のことを一人称複数で呼ぶ。

そしてラストシーンは、森田と岡田の高校時代の思い出で幕を閉じる。

 

さて、か弱き爬虫類「ヒメアノール」とは誰のことなのか。

真の捕食者は誰なのか。

 

 

【蛇足(爬虫類だけに)】

とはいえとはいえ、恋愛弱肉強食に関しては、かなり肯定的に描かれていると思うんですよね。

森田がチラッと言及する「経済的な弱肉強食」と、この恋愛弱肉強食が、現代日本では合法なのですが、

前半のラブコメパート、めちゃめちゃハッピーで面白おかしいでしょ。

私もファロセントリック少年ボーイなので、女の子に手のひらでコロコロされるのは嫌だなあと思うのですが、

やっぱりそういう関係が一番ピースフルでほほえましいよなあ。

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